満員電車の檻 ― 愛理、視線と指先の中で

『満員電車の檻 ― 愛理、視線と指先の中で』

朝のラッシュアワー。
わたしは、いつものように、満員の通勤電車に揺られていた。
でも今日の車内は――なにかが違っていた。

吊り革に手をかけて立つわたしの身体に、ぴたりと密着する誰かの存在。
押し潰されるのはいつものことなのに、今日は……肌の奥まで刺さるような視線と、忍び込む“なにか”を感じていた。

(変……誰かの手……?)

背後から、そっと腰に触れる感触。
ぎゅっと膝を閉じると、それをなぞるように、指がスカートの内側へ這い上がってくる。
思わず息が詰まった。

「っ……」

声にならない吐息が、喉の奥に詰まる。
どうして……? どうして誰も気づかないの……?

それでも、わたしは動けなかった。
恥ずかしさで脚がすくみ、恐怖で心が凍り、でも――
身体の奥だけが、なぜか熱を持ち始めていた。

(だめ、こんなの……おかしい……)

だけど、指先は止まらなかった。
太ももの内側、ストッキング越しにゆっくり、じっくりと這いまわる。
指の腹が柔らかく押し当てられるたびに、下着の奥が――ずくんと疼いた。

「ふっ……ん、ぅ……」

わたしの脚がわずかに震えた。
濡れてる……なんで……こんな、恥ずかしいことされてるのに……。

(誰か、見てる……? わたし、今……変になってる……)

耳元でふっと吐息がかかると、背筋がぞわっと泡立つような感覚に包まれた。
やさしく、でもいやらしく。
指が、スカートの中で、わたしの中心を――やわやわと撫でていた。

「……あ……っ……」

わたしの指先が吊り革をぎゅっと握る。
逃げたいのに、脚が動かない。
むしろ、逃げようとすればするほど、腰がふわりと揺れてしまう。

「こんなに……濡れてるよ?」

耳元で囁かれたその声に、恥ずかしさで頭が真っ白になる。
やめて……聞かないで……気づかないで……
でも、身体はもう――否定できなかった。

指先が、ショーツの内側へそっと入り込み、じかに触れられたとき。
わたしは、小さく跳ねた。

「んっ……っぁ……っ」

柔らかく撫でるだけ。
中には入れない。
でも、その“入れない”ことが、わたしをもっとおかしくさせた。

(触れてるだけなのに……どうして……こんな……っ)

脚が震える。
お腹の奥がきゅっとなって、膝がこすれる。
ふとももが、濡れた感触にくすぐられて、呼吸が乱れていく。

「ふふ……可愛いね、感じやすいんだ」

そんなこと、言わないで……
でも、その声が耳に触れるたびに、わたしの胸はきゅんと高鳴ってしまう。

「や……あ……そこ、触らないで……っ」

恥ずかしいのに。
声を出したくないのに。
でも……乳首が、いつの間にか立っていた。

男のもう一方の手が、ブラウスの前からゆっくりと忍び込んでくる。
下着の上から、やさしく、焦らすように、乳房を包む。

「っぁ……やっ……んっ……!」

上下から、なでるような愛撫。
触れているのは、指先だけ。
押し込まれたり、強く揉まれたりはしないのに――わたしはもう、限界に近づいていた。

「いきそうなの? こんなところで?」

車内の揺れに合わせて、指がクリトリスをかすめる。
その瞬間、胸の先端がきゅんとしびれて、背中が跳ねた。

「だめぇ……やめて……っ、お願い……!」

なのに、止まってほしくなかった。
そのまま――いかされてしまいたかった。

でも。

「……まだだよ。もっと……焦らしてあげる」

ふ、と指が離れた瞬間、わたしの目から涙がこぼれた。
悔しくて、恥ずかしくて、どうしようもないほど、濡れていた。

誰も助けてくれない満員電車の中で。
わたしは、徹底的に“女の身体”として扱われていた。
ただ、誰かの視線の中で、弄ばれ、焦らされ、壊される寸前まで――
でも、いかせてもらえない。

(どうして……こんな……わたし……おかしくなっちゃう……っ)

制服の下、わたしの身体は、完全に開いてしまっていた。
羞恥と快感に塗れながら、誰にも言えない絶頂を、何度も寸止めされたまま。
わたしはただ、駅に着くのを待つしかなかった。

――でも、もう一度だけ……
彼の手が、指が、あの焦らしが――触れてくれるなら。

(お願い……今度は……ちゃんと……いかせて……)「はぁ……っ……ん……っ」

胸元にこぼれる吐息。
制服のボタンがひとつ、いつの間にか外されていて、そこから下着のレースがほんのり覗いている。
誰かに見られてしまうかもしれない――その不安が、また違う“熱”となってわたしの内側を煽っていた。

(バカみたい……こんなに……濡れてる……)

なのに指先は、まだ“挿れてこない”。
わたしの中心を、そっと撫でるだけ。
そのたびに、愛液が溢れて、布がくちゅくちゅと音を立てる。

「くすぐったいでしょ……でも、気持ちいいんだよね」

耳元での囁きが、もはや命令のように心に刺さる。
いやだと頭では拒んでいるのに、腰はわずかに、その指を追うように揺れていた。

(だめ……でも、もっと……触って……)

恥ずかしい願いが、心の奥で暴れはじめる。
濡れた下着をぐっとずらされると、冷たい空気が、濡れきった肌にぴたりと張り付く。

「っ、やぁ……」

指先が――やっと、花びらの奥へ忍び込んできた。

(入ってくる……っ)

身体がビクッと跳ねた。
でも、その動きさえ、男の手の中では甘えた震えに変わっていく。

ぐちゅ、ぬち、という水音。
それがわたしの中から聞こえているなんて、誰にも知られたくないのに――
その音を聞くたびに、わたしの中の“女の部分”が、疼くように喜んでしまう。

「指、飲み込んでる……ふふ、もっと欲しい?」

「っ、ちがっ……う、わたし……っ……」

否定の言葉は、もはや意味をなさなかった。
中をなぞられるたびに、身体が勝手に応えてしまう。

そしてその時――

もう一方の手が、わたしのブラウスの中へ。
下着越しに硬く立った乳首を、そっと指先で転がされる。

「っ……ぁぁぁ……!」

上下から同時に。
まるで、思考を奪い尽くすように、じっくり、優しく、でも執拗に、わたしを責めてくる。

「ほら……そろそろ、いきたいでしょ……?」

(だめ……言わないで……そんなこと……っ)

でも、わたしの身体は正直だった。
熱く、じんじんと疼き、腹の奥が何度も波のように揺れる。

「ほら……いってごらん?」

その言葉と同時に――

乳首に、くりくりと優しく、でも確かに圧がかかり。
膣の奥で、ぐっ、と指先が曲がった。

「っ――あ……っ……ぁぁ……っ……!」

波が、押し寄せた。
ふくらんで、うねって、熱く、苦しく、甘く――

わたしは、全身で絶頂を迎えてしまった。

ふとももがくちゅ、と音を立てるほど濡れ、下着はもうぐっしょりと染みきっていた。
脚が震えて立てなくなり、吊り革を必死に握る手だけが、わたしの意識をつなぎとめていた。

(……やだ……わたし……いっちゃった……っ)

その事実に気づいた瞬間、羞恥が一気に押し寄せる。
涙が溢れた。
恥ずかしくて、悔しくて、でも――快感の余韻が、わたしの奥でまだ燻っていた。

「可愛かったよ、愛理ちゃん……」

その声が耳に残る。

次の駅に着いた。
扉が開く。
誰かが降りていく。
でもわたしは、降りられない。
足が、すくんでいた。

だって、わたしは――
満員電車の中で、誰にも気づかれずに、いかされてしまったのだから。

(……こんなこと、だれにも……いえない……っ)

なのに、わたしの中には、またあの手を――あの視線を――
ほんの少しだけ、“求めている”自分がいた。

1. 白鳥の停車場

わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。

カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。

ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子

またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。

にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。

3. ぬれたようにぼんやり白く

ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。

それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。

4. 高い高い崖の上

僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。

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