第3話 満員電車での恥ずかしい記憶|「沈黙の奥、忍び寄る指先」

春の朝の通勤電車。
いつもの時間、いつもの車両。
けれど、今日のひかりは昨日までと少し違っていた。
ブラウスのボタンをひとつだけ多く閉じ、スカートの丈も少し長めにしてみた。 (昨日……あんなに……)
心のどこかで、抗うように。 でも、その格好すら、下村の“予想の範囲内”だったのかもしれない。
今日も、混雑が始まった瞬間──
背中に、あのぬくもり。
そして、太ももへと忍び込む“あの指”。
(うそ……また……)
スカートの中を、布越しにゆっくりと撫でていく指先。 昨日よりも、さらにゆったりと、ねっとりと。
ひかりの肌が、じわじわと熱を帯びていく。
(やだ……でも……どうして……)
ぎゅっと足を閉じる。 でも、その抵抗は、まるで“招いている”かのように思えた。
下村の指は、太ももの内側を撫で、そして下着の端に触れる。
そこからが、本当の“攻め”だった。
今日は、下着の縁に沿って、指がゆっくりなぞられる。
まるで、自分の身体の形を正確に記憶しようとしているかのように。
(あ……そこ……っ)
触れてはいけない。 けれど、触れてほしい。
そんな矛盾した感情が、ひかりの中でせめぎ合う。
やがて、駅に停車。
ピタリと止まる指。
(あ……また……止まる……)
駅のアナウンス。 ドアの開閉。
その間、彼の指はまるで空気のように静かだった。
けれど、再び電車が動き出すと──
(ん……っ)
布の上から、中心をゆっくり、ゆっくりと押し撫でてくる。
(そんな……っ、だめ……っ)
下着越しに感じる刺激は、すでに単なる“触感”を越えていた。
声にならない吐息が喉で絡まり、ひかりは無意識に太ももを擦り合わせてしまう。
(……自分から、動いちゃってる……?)
羞恥と混乱の渦の中。
ひかりの身体は、明確な“湿り気”を帯びはじめていた。
(でも、まだ……直接じゃ、ない……)
その意識が、かろうじて彼女の自制心を支えていた。
しかし──
次の停車駅。 そして、動き出す電車。
今度の指は、違った。
下着の奥へと、ふわりと滑り込んできた。
(うそ……っ)
直接、肌に。
クリトリスのすぐ脇を、なぞるように動く。 けれど、“そこ”だけは、決して触れない。
まるで、焦らしのために生まれたような指先だった。
ひかりは脚をぴんと張って、なんとか耐える。
(……こんなところで……絶対に……)
だが、次第に膝が震え出す。 喉が熱くなる。
パンプスの中のつま先にまで、力が入る。
(……わたし、変になっちゃう……)
それでも、下村の指は触れない。 触れないからこそ、熱が逃げ場を失って蓄積していく。
そして──
ほんの一瞬、スッ……と触れた。
(っっ!!)
クリトリスの先端を、微かに。
本当に、指先がかすめただけ。
でも、その一瞬だけで、ひかりの身体は震えた。
(……バレちゃう……これ以上されたら……)
でも、誰も見ていない。 誰も気づかない。
混雑にまぎれて、誰にも止められない。
──そして、止まる駅。
また、寸止め。
(……どうして……止めちゃうの)
内心で抗議するひかり。
でも、すぐにまた動き出す。 また撫でる。 またかすめる。
クリトリスを、乳首を、心を。
もじもじと揺れる脚。 こらえる喉。
そのすべてが、すでに“快感”の一部となっていた。


