第6話 満員電車での恥ずかしい記憶|「濡れた夜に、一人で堕ちて」
朝の満員電車。
吊革を握る手が震えるのは、疲れのせいでも寒さのせいでもない。
(また……来る)
予感とともに、スカートの奥へと忍び込んでくる指。
満員の車内。
誰もが他人を見ていないふりをするなか、ひかりの身体だけが“異物”のように意識され続けていた。
「……っ」
下村の指が触れたのは、下着越しのクリトリス。
指先で円を描くように、焦らす。
もうそれだけで、ひかりの腰は小刻みに揺れていた。
(だめ……わかってるのに……)
誰かに見られているかもしれない、そんな状況なのに、身体の奥では快感がじわじわと湧き出していた。
「ん……」
そして──乳首にも、もう一方の指。
制服のブラウスの上から、ブラ越しに乳首をなぞられ、軽く押される。
そのたびにスカートの奥で疼く。
(やだ、どっちも……っ)
満員電車の圧迫された空気の中。
ひかりの耳には、息遣いと車輪の音しか届かない。
でも、その中で確かに──彼の指の動きだけが、鮮明に感じられた。
(わたし……変になってる)
快感に溺れる、ではなく。
快感を“欲しがる”ようになっていた。
「……はっ、……ぁ……っ」
音にならない吐息。
誰にも気づかれず、誰にも触れられず、
でも──ひかりの身体だけが、何度も絶頂寸前に連れて行かれる。
その日も、下村はギリギリで手を引いた。
(また……イけなかった……)
ひかりの身体は熱をもてあましたまま、会社へと運ばれる。
──その夜。
部屋のカーテンを閉め、灯りを落とす。
ベッドの端に腰を下ろし、スカートを脱がずにそのまま膝を折った。
「……わたし……ほんとに、どうしちゃったんだろ……」
言葉とは裏腹に、指はすでに太ももの内側へ。
自分の指で、乳首を触れる。
クリトリスのあたりを、下着越しにゆっくり撫でる。
(朝のこと……思い出す……)
その瞬間。
身体がびくっと跳ねた。
あの寸止めの余韻が、まるで残像のように脳裏に蘇る。
「……ぁ、あっ……っ」
片手で胸、もう片方で奥を弄る。
寸止め。
焦らす。
触れるのに、終わらない。
なかなかイけない。
でも、それが……気持ちいい。
(もっと……焦らされたい……)
今やひかりの指先は、下村の指の再現になっていた。
(毎日、毎朝……されて……)
(夜になると、こうして……)
ひとりで。
あの電車での続きのように。
自分で、自分を──
「だめ……もう……あっ、あぁぁ……!」
ひときわ強く乳首を挟み、クリトリスを撫でた瞬間。
全身が震えた。
視界が白く染まり、全身の力が抜けていく。
シーツに倒れこみ、呼吸を整えながら、
ひかりはただ天井を見つめていた。
(明日も……また、来るんだろうな)
朝の満員電車。
焦らし。
寸止め。
そして夜、自分で果てる。
この循環から、ひかりはもう抜け出せない。
──快感に囚われた、甘い地獄。
……終。

