第4話:一枚の名刺と濡れた記憶 契約の前に 「脱がされて、くすぐられて――焦らしの契約」

小さな会議室のドアが、静かに閉まる。 その音が、美羽の胸に響いた。
(……私、ここで何してるの……?)
分かっているのに、答えたくない。 けれど、身体はすでに答えを知っていた。
「白石さん、こっちを向いて」
椅子の背もたれに軽く寄りかかる権田の声は、低く、ゆるやか。
けれど、その命令はゆるぎなく、美羽の全身を支配していた。
ゆっくりと振り返ると、彼の視線が胸元に落ちるのが見えた。
「ジャケット、脱いでみようか。暑いでしょ?」
その一言に、美羽は喉を鳴らす。 確かに、空調は効いていた。 けれど、スーツの内側は熱く、じっとりと汗ばんでいた。
(……こんなに、濡れてるなんて)
ゆっくりとボタンを外し、ジャケットを脱いで、背もたれに掛ける。 白いブラウスが、しっとりと身体に貼りついていた。
権田はそれを見て、にやりと笑う。
「すごく……いいね。下着のラインが、うっすら見えてる」
ブラの隙間に、忍び込む指先
「少し、胸、見せてくれる?」
そう言って彼は、胸元に手を伸ばした。 ボタンをひとつ、またひとつ。
「っ……」
白いブラのレースが露わになる。 汗ばんだ肌に、冷たい空気が触れて、震えが走る。
「綺麗だな、白石さんの胸……」
彼の指が、ブラの縁をなぞる。 そして、布の隙間に、そっと指先を滑り込ませた。
「んっ……やっ……そこ、だめ……っ」
ブラの内側で、乳房の柔らかな肉をなぞる指。 くすぐるように、焦らすように、触れるたびに乳首がびくんと跳ねる。
「ほら、こんなに硬くなってる……」
指先が、乳首の周囲を円を描くように撫で、時折、軽く弾いた。
「……あっ……んん……っ」
声が漏れる。 羞恥で顔が熱くなるのに、身体は抗えなかった。
下着の中へ、滑り込む手
「じゃあ、次は……こっちも、見せてくれるかな」
彼の手がスカートの上を滑り、膝を撫でながら、ゆっくりと太ももの内側へ。
「今日は……ちゃんと見せてもらうよ」
言葉と共に、スカートの裾がめくられる。 ストッキングと下着の間に指が滑り込み、ゆっくりと中へと入っていく。
「や……あ……だめ、そんなとこ……っ」
「濡れてるね。ちゃんと、受け入れてる証拠だよ」
指がショーツの中で、中心をなぞる。 柔らかなヒダをすくうように、焦らすように。
「んっ……くぅっ……あ、ああっ……」
焦らし、寸止め、そして……
「まだ、入れないよ。まだ……楽しむ段階だから」
指はクリトリスのすぐそばをくるくると円を描き、時折スッと離れる。
「ほら……自分でも分かるでしょ? 触れられたいって、身体が言ってる」
「ちがっ……ちがうのに……っ」
「白石さんの身体は、もう嘘つけないよ」
乳首はブラの下でツンと立ち、ショーツの中はぐっしょりと濡れていた。
声を出せない密室の中で
「大きな声、出せないよね? でも、感じてる顔は……ちゃんと見せて」
彼は美羽の顎をとらえ、ゆっくりと顔を上げさせる。 潤んだ瞳が、恥ずかしさと快感で震えていた。
「いい子だ。そのまま……もっと感じて。まだ、服の上からだからね?」
「っ……は、はい……」
羞恥に震えながらも、美羽はうなずいていた。
“契約”は、まだ始まったばかり
「これが……俺と白石さんとの、“真の契約”だ」
その言葉と共に、権田の指は乳首と秘部を、同時に焦らし続ける。
脱がされて、くすぐられて、触れられて。 けれど、まだ“入れられていない”。
だからこそ、終わらない。 焦らされ続けるこの感覚が、美羽の全身を支配していく。
(お願い……早く……でも、まだ、怖い……でも……)
その迷いさえも、官能に変えられていく。
美羽の“交渉”は、もう戻れない領域に踏み込んでいた――。
1. 白鳥の停車場
わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。
カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。
ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子
またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。
にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。
3. ぬれたようにぼんやり白く
ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。
それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。
4. 高い高い崖の上
僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。


