祭りでの痴漢体験
「初めての恋に戸惑う美桜 ― 夏祭りの夜に」
神社の境内は、ちりちりと蝉の声の残る夕暮れから、
夜の喧騒へとゆっくりと塗り替えられていた。
浴衣を身にまとった美桜は、
屋台の灯りの間を、どこか落ち着かない面持ちで歩いていた。
胸元の帯がほんのり緩んでいるのは、少し汗ばんだせいか――
それとも、さっきまで隣にいた彼の指先が、
無意識にふれてきたせいなのか。
「……ほら、美桜。もう少し、こっちにおいで」
耳元でそう囁かれた声に、思わず身体がびくりと震える。
けれど、声にこもったやわらかな熱に抗うことはできなかった。
彼――陽一さんは、美桜よりひと回り年上の、落ち着いた空気をまとう男性だった。
取引先の人。なのに、どこか親しげに接してくる距離感が、
美桜の中に芽生え始めた「何か」を、ひそかに育てていた。
人混みの波に押され、自然と彼の隣に寄り添うかたちになる。
その瞬間、彼の手が、さりげなく美桜の腰をそっと引き寄せた。
「……あ、の……」
言葉にならない声がこぼれる。
けれど、陽一の手は離れない。
それどころか、浴衣の生地越しに指がじわじわと、
くすぐるように撫でてきた。
それは“偶然”のふりをした、確かな熱を帯びた触れ方だった。
「美桜、……さっきから顔が赤いよ」
耳元に唇が近づいてくる。
ほんのりとした酒の香りとともに、吐息がふれて、
胸の奥が甘く疼く。
彼の指が、今度は帯の少し上、背中と腰の境にそっと触れる。
それはまるで、ほどけかけた心を見透かすようだった。
「初めて、なんだろう? こういうふうに、誰かに近づかれるの」
問いかけというより、確信に満ちた声。
美桜は俯いて、浴衣の裾をぎゅっと掴んだ。
答えられなかった。
けれど、それが答えだった。
陽一の指が、美桜のうなじにそっとふれた。
そして、背中をなぞるように滑っていく。
「……怖くないよ。君の“感じる”ところ、教えてあげる」
浴衣越しの肌が、夜気を通して敏感になっていく。
人混みのなかにいながら、世界にはふたりしかいないような錯覚。
打ち上がる花火の音にかき消されるように、
陽一の手が胸元の布をそっと押し下げた。
「……あ……っ」
布越しに触れられた胸の先端が、
まるで先に気づいたように、きゅっと硬くなる。
「こんなに……可愛く反応するんだね」
優しいけれど、どこか意地悪な囁き。
ゆっくり、ゆっくりと焦らすように、布越しの指が乳首をなぞる。
まだ“直に”ではないのに、そこがびりびりと痺れるように熱くなっていく。
「……ねぇ、美桜。
感じてる? 初めての恋って、こんなふうに、身体の奥まで染みてくるんだよ」
花火が夜空を照らすたびに、
美桜の内側もまた、静かに、確かに、熱を帯びて――
知らなかった感覚に溶けていった。
1. 白鳥の停車場
わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。
カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。
ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子
またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。
にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。
3. ぬれたようにぼんやり白く
ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。
それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。
4. 高い高い崖の上
僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。



