第1話-制服の奥、知られざる疼き-誰にも見せたことのない疼き


■朝の満員電車、制服の奥で疼くもの

(……今日も、いつも通りのはずだったのに)

あかりは、制服のスカートの裾を握りながら、車内の揺れに耐えていた。
朝の通学電車。ドア付近で身動きも取れないほどの混雑。なのに――。

(誰かの……手?)

右の太ももあたり、スカート越しに感じた“気配”が消えない。
電車の揺れに紛れて、ほんのわずか、撫でられたような感触。
触れていないようで、触れていた。

(……気のせいじゃ、ない)

制服のプリーツをなぞるように、誰かの指がスルリと滑っていく――そんな錯覚。
いや、錯覚ではなかった。
背後のスーツ姿の男性から、ほとんど密着する距離で、あかりの身体にそっと這わせるような動きがある。

(どうして、こんなときに……)

恥ずかしいのに、制服の下――下着の奥が、じんわりと熱を帯びていく。

その日あかりは、“誰にも見せたことのない自分”に気づく。


■誰にも言えない、制服の中の秘密

(やだ……わたし、濡れてる?)

駅に到着して乗客が流れ出すと同時に、あかりは車両の一番端の席に腰を下ろす。
ハンカチで額の汗を拭いながら、股のあたりの違和感に、どうしても意識が向いてしまう。

(さっき、ほんの少しだけ……撫でられただけで)

誰にも見られていないのに、脚の間の奥、布の中がしっとりしているのを感じた。
ほんの、ちょっとだけ。
でもそれは、確かに“快感”だった。

(制服の下で、こんなふうに感じてるなんて……)

口に出せない。誰にも言えない。
でも、身体は確実に反応していた。


■初めての疼きと、初めての記憶

(たしか……最初にこんなふうになったの、いつからだったっけ)

制服に袖を通すたび、スカートの下の自分が“別の何か”になるような感覚。
電車に揺られながら、見られているのでは――と錯覚したときの、あのピリピリした甘い緊張感。

(恥ずかしい……のに……もっと)

誰かに見られている“かもしれない”――
誰かに触れられている“かもしれない”

そんな曖昧な境界が、あかりの想像をどんどん刺激する。

そしてそれが、“感じる”きっかけになってしまっている自分に気づいてしまう。


■制服を着るたび疼いてしまう身体

その夜。あかりは、自分の部屋の姿見の前に立っていた。

制服のまま、ブラウスのボタンを一つ外し、スカートを両手でなぞってみる。

(……電車の中で触れてきた“誰か”って、どんな人だったんだろう)

妄想が膨らむ。
スーツの男性か、年上のサラリーマンか。
それとも、同年代くらいの大学生風の人――?

(そっと撫でられたとき、わたし……ほんとうに、反応してた)

スカートの中に指を滑らせてみると、まだ湿ったままのショーツの感触が指先に触れる。

(こんな自分、どうかしてるのに)

でも、制服の奥に疼く“何か”は、
もう気づかないふりでは抑えきれないくらい――熱く、甘く、疼いていた。


■エピローグ:制服を脱げないまま

その夜も、眠れなかった。

目を閉じると、あの電車の中の密着感、誰かの指、耳元の吐息――
そして、感じてしまった自分の羞恥が、何度も何度も蘇ってくる。

制服を脱げないまま、あかりは静かにベッドの中で丸くなる。

(わたし……このまま、制服の下の自分を隠し続けられるかな)

明日もまた電車に乗る。
制服を着る。
そして、誰にも言えない“疼き”を抱えたまま――。

あかりの“妄想”と“現実”の境界は、少しずつ、溶けてゆくのだった。

――第1話・完。

1. 白鳥の停車場

わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。

カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。

ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子

またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。

にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。

3. ぬれたようにぼんやり白く

ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。

それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。

4. 高い高い崖の上

僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。