第3話 覗かれた浴室|浴室越しの気配

雨上がりの午後、亜弥の家に取り付けた新しいユニットバスの点検を理由に、俺はふたたびその家を訪れた。

もちろん、それはただの名目だ。

俺が本当に確かめたかったのは――
あの浴室に仕掛けた“視線の罠”が、しっかりと作動しているかどうか、
そして――
そこに映る、彼女の無防備な姿が、俺の想像を超えるものかどうか。

■「仕掛けは完了している」

天井裏の点検口。
そこから伸ばした小型カメラは、わずか1.5cmの隙間にぴたりと収まっている。

設置は前回の作業の際、給湯器配管の点検中に行った。
誰にも気づかれずに済むよう、配線は断熱材の裏を這わせ、レンズは換気口の陰に紛れさせた。

これで、浴室の扉が閉まっても――
タオルを外し、裸になっても――
彼女は“見られている”ことを知らない。

それが、たまらなくゾクゾクする。

俺はその家のリビングにいるふりをしながら、スマホの小さな画面に視線を落とした。

ちょうど、彼女が帰宅したところだった。

スーツの裾から覗く膝。
今日は前より少し短めのタイトスカート。
髪を束ねたまま、シャワーへ向かう足取りがどこか、甘く、無防備に感じられた。

■「気づいていない身体」

浴室の中。

彼女は制服を脱ぎ、ゆっくりとシャツのボタンを外していく。

首すじから肩、鎖骨。
それに続く、柔らかい曲線があらわになる。

(こんなところまで俺に見せるなんて、ほんとうに無防備だな……)

ブラウスを脱いだ瞬間、白いブラが湯気に湿って、わずかに透ける。
その下、うっすらと浮かび上がる乳輪の輪郭――

(おいおい、そんな……)

彼女はそんな自分に気づかず、ショーツもゆっくりと降ろし、バスマットの上に立った。

そのときだった。

画面越しに、彼女の太ももがわずかに震えたのが見えた。

シャワーの水も、熱さも、関係ない。

――違う。
これは、俺の“視線”に、身体が無意識に反応してる。

そんなバカな、と思うだろうか。
けれど、羞恥と快感は表裏一体。
本人が自覚するより先に、身体は感じてしまうものなんだ。

そしてそれは、確実に――亜弥の中で、始まりかけている。

■「無自覚な喘ぎ」

湯気の向こうで、彼女が髪を洗い始める。

頭を後ろに反らし、白い首筋を露わにした瞬間――
両胸が重力に引かれて、形を変えた。

小ぶりながらもハリのある、若さをそのまま映したような胸。
その先が、お湯と空気と――そして、俺の視線に晒されて――
じんわりと、硬くなっていくのが分かる。

(そうだ……それでいい……)

シャワーを止める音が聞こえた。

そして――タオルを手に取った彼女が、ゆっくりと股のあたりに触れる。

「……っ……」

小さく、唇が震えた。
目を閉じ、何かに耐えるような顔をした。

それはきっと、かすかな“疼き”だったはず。

けれど、彼女にはまだ、それが“なぜか”わかっていない。

自分の身体が、なぜこんなにも敏感になっているのか。
なぜ、拭くたびに、指先がぴくりと反応してしまうのか――

その原因が、“誰かの視線”にあるとは、まさか思っていないだろう。

(そのまま、気づかないままでいい)

それがまた、たまらなく興奮する。

■「見られることの快感」

彼女は鏡の前で髪を結い直していた。

まだタオル一枚の姿のまま、胸を押し潰すように腕を組みながら。
そのとき、ふいに――
鏡の中の自分と、目が合った。

いや、正確には。

その瞳が、どこか遠くを見ているような……そんな錯覚を起こした。

(まさか、気づいた……?)

いや――違う。
その目は、ただ、ぼんやりと濡れていた。

まるで、自分の身体に戸惑っているかのように。

俺の視線を感じているわけじゃない。
でも、どこか“何かに見られている気がする”――
そんな無意識の警戒と、なぜか覚える快感。

それが混ざったとき、女は濡れる。

そう、まさに今の彼女のように。

タオルの下の股間は、さっきよりも確実に湿っていた。
わずかに食い込んだ布の線に、汗ともシャワーとも違う濡れがにじんでいた。

俺はスマホをきつく握りしめた。
その画面の奥で、まだ気づいていない亜弥が、少しずつ変わり始めていた。

■「覗きの悦楽」

夜になって、俺は自室に戻った。

浴室での映像は、録画機能で保存してある。
何度でも繰り返し、見ることができる。

だが――
いちばん興奮するのは“生”だ。
リアルタイムで覗く、そのスリル。
見つかりそうで、見つからない。
バレそうで、絶対にバレない。

そのギリギリのラインが、なによりもゾクゾクさせる。

(次は……もう少し、仕掛けを増やすか)

彼女の部屋にはまだ、いくつも“仕込み”の余地がある。
それに、浴室だけが舞台じゃない。

スカートの中。
無防備に伸ばした脚。
洗面台でかがんだ瞬間の、背中越しのライン。

すべてが、俺の視線の餌食になる。

そしていつか、彼女は気づく。

「見られること」が、自分をどう変えていくのかを――

俺の“視線”が、彼女の奥に何を芽生えさせたのかを――