第5話 エロおやじの手ほどき|「チャット越しの痴漢体験」
夜、瑠菜はまたパソコンの前に座っていた。満員電車での出来事が頭から離れず、心の奥に残る妙な疼きが、どうしても消えなかった。
(八田さんに……あんなことされて……でも、嫌じゃなかった……)
ライブチャットにログインすると、すぐに八田のアイコンが点灯する。
「こんばんは、瑠菜ちゃん。あの後、どうだった?」
その問いに、瑠菜は思わず俯いた。
「……まだ、ドキドキしてます。頭から離れなくて……」
「それは、君の身体が本当の快感を覚え始めてる証拠だよ」
「……快感……」
八田の声はさらに静かに、甘く低く響く。
「今夜は、君の“痴漢体験”を再現してみようか。僕の言葉と君の想像力だけで、あのときの感覚を呼び戻すんだ」
「えっ……想像だけで……?」
「そう。でも、目を閉じて、僕の声に身を委ねれば、必ず“感じる”はずだよ」
瑠菜はゆっくりと目を閉じ、イヤホンを耳に深く差し込む。八田の声が鼓膜を優しく撫で、まるで耳元で囁かれているかのようだった。
「じゃあ……電車の中。人混みで身体が押しつけられて、どこにも逃げ場がない。後ろから誰かの手が、君の腰にそっと触れる」
「……うん……」
「最初は偶然かなって思うけど、次の瞬間、その手がゆっくりとスカートの中に滑り込んでいく……」
瑠菜は言われた通り、両手で自分の腰に触れ、そこから指先をスカートの中へと忍ばせていく。
「……あっ……」
「誰にも助けは求められない。声を上げたら、周囲に全部バレちゃうから……小さく震えるしかない。なのに、どうしてか、君の身体は……濡れてきてる」
瑠菜の指が、下着の上から自分の秘部に触れる。湿り気を帯びた感触に、自分でも驚く。
「……ほんとに……濡れてる……」
「それはね、君が“見られていた”ことに興奮したからだよ。今日も、今も、君は見られてる。僕に、全部、見られてるんだよ」
言葉のひとつひとつが、身体の深いところに突き刺さる。
「じゃあ、そのまま、下着の上からゆっくり指でなぞってみようか。焦らすように、じらすように……」
指先がリズムを刻むたび、息が漏れそうになるのを必死に堪える。
「……あっ……だめ……」
「だめじゃない。もっと恥ずかしい気持ちを味わってごらん。チャットの向こうで、僕が君のすべてを見ているんだから」
羞恥と快感が重なり合い、意識がぼんやりと白く染まり始める。
「……八田さん……もう、やだ……恥ずかしい……のに……」
「でも、やめられないよね? だって、君はもう、見られることの快感を覚えてしまったんだから」
震えるような指先が、ついに下着の隙間から指を差し入れた瞬間、息が止まりそうになる。
「……っ……ああ……」
八田は声のトーンをさらに低くして囁く。
「そのまま、自分の一番感じる場所……探ってみて」
瑠菜は震える声を漏らしながら、自分で自分を開いていく。
(こんなこと、してるのに……どうして……気持ちいいの……)
「恥ずかしさも、快感も、全部チャットで伝えてごらん。僕は、全部受け止めてあげる」
八田の声に導かれ、瑠菜は自分を知る快感と、見られる恥ずかしさの深淵に足を踏み入れていくのだった。
1. 白鳥の停車場
わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。
カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。
ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子
またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。
にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。
3. ぬれたようにぼんやり白く
ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。
それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。
4. 高い高い崖の上
僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。


