第6話 エロおやじの手ほどき|「視線の奥で、私は濡れる」

「瑠菜ちゃん、今日が最後のログインだね」

八田のその言葉に、胸がきゅっと締めつけられるような切なさを覚えた。

「……はい。でも、最後に……ちゃんと、知りたいんです」

「何を?」

「……私が、どこまで“変わった”のか」

画面越しに、静かな沈黙が流れる。

そして、八田が口を開く。

「じゃあ、今日は最後に――全部、脱いでみようか」

「……え……」

「自分の意思で、自分の手で。僕に、君の“全部”を見せてごらん」

一瞬、迷いが胸をよぎる。しかし、もう後戻りはできなかった。

瑠菜は震える指で、ルームウェアのボタンを一つずつ外していく。

カメラの前に、裸の自分が晒されていく。身体中を視線でなぞられる感覚。

羞恥に顔が火照り、呼吸は浅くなる。

「……見ないで、って言いたいのに……自分で見せてる……」

「その矛盾こそが、本当の君だよ」

「……やだ……こんな、恥ずかしいのに……」

「でも、身体は……どうしてる?」

視線を落とせば、自分の指が無意識に太ももの内側を撫でていた。

「……やめられない……」

八田の声は、今までで一番やさしく、そして深く響く。

「じゃあ……いまから、想像して。まるで僕の手がそこにあるみたいに」

瑠菜はベッドに横たわり、イヤホンを深く差し込み、目を閉じた。

「君の首筋に、僕の指が触れる。軽く撫でて、くすぐるように。そこから鎖骨、胸元へ……」

その言葉に導かれるまま、瑠菜は自分の指でなぞっていく。震える吐息、指先の熱。

「乳首のまわりを、焦らすように撫でるんだ。直接じゃなく、ぎりぎりで……」

「んっ……」

吐息が漏れ、指が円を描く。乳首に触れる直前で止まるたび、びくりと身体が跳ねた。

「触りたくなるだろう? でもまだ、だめ。もう少し、じらして」

「……苦しい……でも、気持ちいい……」

焦らされる感覚に身体がとろけていく。

「じゃあ……触れてごらん。ゆっくり、優しく……」

ついに指が乳首に触れた瞬間、背中が反り返る。

「……ああっ……っ」

快感が一気に押し寄せ、涙がにじむ。

「そう、そのまま。感じたままに、声を出していいよ。もう隠さなくていい」

八田の声が、優しく背中を押す。

「今度は……足を開いて。自分の一番感じる場所を、撫でて……」

恥ずかしさに震えながらも、瑠菜は従った。片手で太ももを開き、もう片方の指がゆっくりと秘部をなぞる。

「……ん……あっ……すごく……」

「あの日の電車の中、痴漢の手が触れてきたときのこと、思い出して」

「……やだ……でも……思い出すと……」

「気持ちよくなるだろう?」

「……はい……っ」

「じゃあ、僕の手だと思って、触ってごらん。下着の中に、ゆっくり……」

指が濡れた感触に出会い、思わず息をのむ。

「……濡れてる……八田さん……」

「それが君の“変化”だよ。恥ずかしさを快感に変えられるようになった。君はもう、見られることに興奮できる女の子だ」

「そんな……そんなの……っ」

否定しようとしても、身体は正直に反応する。

「じゃあ、最後に……カメラの前で、君自身を満たしてごらん。全部、見せて。全部、出して」

涙が頬を伝いながら、瑠菜は深く指を沈めていった。

「見てて……八田さん……私、こんなに恥ずかしいのに……見てて……っ」

羞恥と快感が一つになり、彼女はモニターの前で震えながら絶頂を迎えた。

視界が揺れ、世界が白く染まっていく。

静寂の中、八田の穏やかな声が響く。

「本当に、よく頑張ったね。これが君の、“ログアウト”だ」

画面が暗転し、静かな余韻だけが部屋に残った。

けれど――

瑠菜の心の奥に刻まれた快感と羞恥は、ログアウトしても消えることはなかった。

彼女は知ってしまった。

見られていることで、こんなにも自分は濡れてしまうのだと。

1. 白鳥の停車場

わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。

カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。

ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子

またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。

にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。

3. ぬれたようにぼんやり白く

ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。

それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。

4. 高い高い崖の上

僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。