第4話 秘密のライブチャット| 「スーツの奥で、知られていく感覚」

月曜の夜、オフィスでの疲れを感じながらも、ひかりはPCの前に座っていた。

スーツ姿のまま。ボタンをひとつ外しただけで、どこか気持ちが切り替わるのを感じていた。

「こんばんは……ひかりです」

画面に映る自分は、仕事を終えたばかりの自然な笑顔。 しかし、その奥には、昨日の記憶がじんわりと残っていた。

──指先が触れた自分の体温。
──誰かの言葉に導かれた羞恥と興奮。

画面には、今日も常連の名前が並んでいる。

【たける】:こんばんは、今日もスーツ姿なんですね。とても素敵です。

「ありがとうございます、仕事帰りなんです。ちょっとだけ疲れてるかも……」

【たける】:そのお疲れの感じも、すごく魅力的ですよ。

(たけるは、いつもやさしい)

心があたたかくなる──その直後。

【よこっち*秘密メッセージ*】:そのスーツ、ぱつんぱつんだね……ボタン、今にも弾けそう。中のふくらみ、隠せてないよ?

(また……)

スーツの下、ブラのワイヤーが肌に食い込む感覚が、急に意識される。

【よこっち*秘密メッセージ*】:ちょっと、前かがみになってごらん? その隙間から谷間が覗くとこ、想像だけで……ゾクゾクする。

(いや……無理……でも……)

無意識に姿勢を正したひかり。 それでも、スーツの生地が胸を包む感触は、どこかぬるんと湿り気を帯びていく。

【たける】:今日、声が少し柔らかいですね。お仕事、大変でしたか?

「はい……でも、こうして話せる時間があると、気持ちが落ち着きます」

【よこっち*秘密メッセージ*】:その“落ち着いた顔”、たまらないよ。下、もうじっとりしてるんじゃない? スーツの下……今日は、どんなの履いてるの?

(そんなの、言えるわけ……)

でも、彼の言葉が届いた瞬間、自分の身体がゆっくりと反応する。
膝の裏から太ももにかけて、湿った熱がじわじわとにじみ出してくる。

【よこっち*秘密メッセージ*】:ゆっくりでいいから、椅子の上で脚、組み替えてみて? スカートの奥、少しだけ……風にさらしてみようか。

(そんな指示……でも、やっちゃう……)

画面には見えないように、足を組み替える。
その拍子にスカートがわずかにせり上がり、太ももの内側が空気に触れる。

(……見られてる)

よこっちは何も言わない。 だが、その沈黙がかえってじわじわと胸を締めつける。

【よこっち*秘密メッセージ*】:ふふ……準備、できてるからね。今夜は、リモートの“吸うやつ”、オンにしてあげようか?

(吸うやつ……?)

すでにUSBで繋がれた玩具の存在を思い出す。まさか、ほんとうに、ここで……?

【たける】:ひかりさんがリラックスしていると、こちらも安心します。声が心地いいです。

(私は……どっちを見てるんだろう)

表のたける。 裏のよこっち。

ふたりの視線が交差する中で、ひかりは次第に、自分の“快感のスイッチ”がどこにあるのか、わかり始めていた。

【よこっち*秘密メッセージ*】:乳首、もうぴんぴんなんじゃない? スーツ越しでもわかるよ……吸ってほしいの? それとも、見られながら我慢するのが好き?

(うそ……見えてる?)

確かに、肌着越しに感じる感覚が変わってきていた。
ぴくり、と胸の先がスーツに擦れるたび、敏感に反応する。

「……っ」

わずかな吐息が、声になる。

【たける】:ひかりさん、もしかして……少し寒いですか?

「えっ……いえ、大丈夫です」

まさか、“寒さ”ではないことなど、言えるはずもない。

見られている。

気づかれずに、でも確実に。
乳首を、スカートの奥を、彼の言葉がなぞっていく──

それが、たまらなく……恥ずかしくて、でもやめられない。
自分の奥にじわりと溜まっていく、欲望の重み。
ひかりは、静かに足を閉じた。

──吸われる前に、自分の内側が、先に音を立てて崩れそうだった。

1. 白鳥の停車場

わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。

カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。

ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子

またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。

にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。

3. ぬれたようにぼんやり白く

ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。

それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。

4. 高い高い崖の上

僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。