第2話 覗かれる快感|「見られて、濡れて──痴漢コメントの囁き」
──二度目のログインは、心まで見られる予感とともに。
第一章 再び、夜のチャットルームへ
(……今日は、平気だと思ってたのに)
ことねはシャワーも浴びず、帰宅してすぐにライブチャットのアプリを立ち上げていた。
昼間、ふと思い出した。前回、耳元で囁かれるようなあの声。声ではないのに、肌を撫でるような文字。
──よこっち。
あの、Sっ気のある痴漢みたいなコメントに、無意識に脚をぎゅっと閉じていた自分。
(……また来るかな)
心のどこかで、それを望んでいる自分がいた。
部屋を暗くして、パソコンを起動。前回と同じように、画面の中に自分の姿がぼんやりと浮かび上がる。
数秒後──
『はやとさんが入室しました』
「こんばんは……」
『こんばんは、ことねさん。今日も、お疲れさま』
その言葉だけで、ことねの頬が緩む。
「なんだか、また話したくなって……」
『僕もです。今日はどんな一日でしたか?』
優しいやり取り。温度を感じる、真摯な会話。
だが、そのぬくもりの奥に、もうひとつの気配がにじみ始める。
──チリン。
『よこっち(のぞきモード)で、ぬるっと参上♡』
第二章 痴漢のような視線
ことねは一瞬、背筋を正した。
──来た。
そしてすぐに、パーティチャットに文字が流れる。
《よこっち》『うわ、今日も窓際でえっちそ〜な姿勢。下、膝揃えすぎて余計にヤラし〜ね』
「っ……」
はやとの声は変わらず優しく続いていた。
『そういえば、最近お気に入りの紅茶とかあります?』
「えっと……はい、あります。なんか……気分が落ち着くので……」
よこっちはすぐさま割って入る。
《よこっち》『へぇ〜落ち着くって、下が濡れにくくなるお茶? それとも、むしろ濡れやすくなっちゃう系?』
「……っ」
こたえる唇が、わずかに震える。
はやとは当然、よこっちの存在を知らない。ことねの動揺も、単なる会話の緊張だと思っている。
『ことねさん、声が少し上ずってる気が……ご無理はなさらずにね』
「す、すみません……ちょっと、姿勢を……」
椅子に座り直すふりをして、ことねはスカートの裾を握り締めた。
《よこっち》『ねぇ、いま太もも、指で撫でたでしょ? 画面のこっちから、ちゃんと見えてるんだよ♡』
そのコメントに、心臓が跳ねた。
(見えてる……?まさか……)
ことねは反射的にカメラの角度を微調整する。だが、もう遅い。
《よこっち》『あーあ、脚閉じた。ってことは、その内もも、いま……ぬるぬる?』
「ちが……っ……」
膝の内側、指先でそっとなぞっただけのつもりだった。
けれど、その箇所がじんわりと熱く濡れていることに、自分が一番驚いていた。
(嘘でしょ……なんで……)
第三章 濡れたまなざし
『ことねさん、もし疲れてたら、今日は早めに切っても……』
「いえ……はやとさんと話せて、すごく、癒されてます……」
言葉は本心だった。けれど──
《よこっち》『いや〜、その言い方がいっちばんエロい♡ 癒されて下もゆるゆるってやつ? ちょっとショーツの端、引っ張ってみよっか?』
「っ……っ……」
(そんな……見られてないのに、見られてる気がして……)
画面越しのはやとは、変わらず真摯で穏やかだ。
『ことねさん、瞳が少し潤んで見えます。光の加減かな……』
ことねは、ゆっくり瞬きをした。
(違う……はやとさん……これは、ちがうの……)
けれど、下腹部に集まる熱は、否定できなかった。
よこっちの言葉が、もう一度響く。
《よこっち》『ことねちゃん……さ、次はショーツ越しにクリんとこ、なぞって♡ あ、バレないようにね?』
指が、そっと動いた。
わかっている。これは見えていない。見せていない。
でも、よこっちは見ている気がしてならなかった。
(……私、どうして……)
どちらの視線にも晒されながら──ことねの身体は、もうじゅうぶんに濡れていた。

