第3話 覗かれる快感|「優しさと悪戯のはざまで」

──三度目の夜、ことねは“視線”に抗えなくなっていた。

第一章 甘い声と優しい人

「こんばんは……」

ログイン直後、いつものように柔らかい通知音が鳴る。

『はやとさんが入室しました』

『ことねさん、今日も会えて嬉しいです。今夜も、無理せずゆったり話しましょう』

ことねは小さく頷きながら、マイクに向かって答えた。

「はい……今日、すごく疲れてて……でも、はやとさんの声聞いたら、ほっとしました」

『それはよかった。ことねさんの声も、僕にはとても落ち着くんです』

穏やかで、誠実で、まっすぐな人。

画面越しとは思えないほどに、言葉のひとつひとつが心にしみる。

(……このまま、はやとさんとだけ、話せたら……)

そう願った矢先──

──チリン。

『よこっち(のぞきモード)で潜入っと♡』

第二章 くすぐる指先と見えない手

ことねの背筋がびくりと震えた。

《よこっち》『ことねちゃーん、今日の下着は何色かな?見せなくていいよ、でも感じて♡』

《よこっち》『まずは上……乳首の上、シャツ越しに人差し指でくるくるってしてみて?カメラに見えないように、ね?』

(やだ……また……)

なのに。

ことねの指先は、気づかないうちにブラウスの胸元に滑り込んでいた。

「……ふっ……」

はやとの声が、優しく響く。

『少し息が乱れてるように聞こえますが、大丈夫ですか?お部屋、暑いですか?』

「だ、だいじょうぶです……」

ことねはカメラに映らないように身体をずらした。

(だめなのに……どうして……)

指先が乳首に触れたとき、シャツ越しにピンと立った感触。

そこに重ねるように、さらにコメントが届く。

《よこっち》『そっちがビンビンなら、下も同じでしょ?指、スカートの中に滑り込ませて。ねぇ、ショーツの内側、今どんな?』

思わず、太ももをぎゅっと閉じる。

だが、布越しのぬめる感覚は、隠せなかった。

「……っ……」

『ことねさん、疲れがたまってるのかもしれませんね。ちょっと背筋を伸ばして、深呼吸してみませんか?』

(優しい……ほんとに、優しいのに……)

でも、よこっちはそんな隙さえ見逃さない。

《よこっち》『背筋伸ばすと、シャツのボタンがパツパツだよ♡ そのままブラずらして、乳首に直接指先ちょんっ♪ できるでしょ?』

「っ……あっ……」

乳首に直接触れると、電気が走ったような快感が全身に広がった。

同時に、下もずぶずぶに濡れているのがわかる。

《よこっち》『いい子いい子♡ じゃあ下も、ショーツのすき間から指いれて……指先ちょこちょこって動かすだけでいいから』

震える手で、スカートの中へ。

ショーツの端をずらし、濡れた感触に指先が触れた瞬間。

「……っぁ……ん……っ」

声が漏れそうになる。

はやとは、何も知らない。

『声、震えてませんか?ことねさん……本当に、無理はしないでくださいね。僕は、話せるだけで充分だから』

(……優しい……苦しいくらい、優しいのに……)

でも、よこっちの焦らしが止まらない。

《よこっち》『ほら、はやとさんには聞こえないけど、俺には分かるよ?指がぬるぬるして、ことねちゃんの体温あがってんの』

(見られてる……いや、見せてる……)

羞恥と快感がごちゃまぜになって、ことねは両脚をわずかに開いた。

ゆっくりと腰を浮かせると、濡れた指先が敏感な部分を──

「……っああ……」

その瞬間、モニター越しのはやとの声が重なる。

『ことねさん、今日も本当に来てくれてありがとうございます。あなたの声が聞けて、僕は幸せです』

(……優しさと、悪戯と……どっちも、私のなかに、残っていく……)

もどかしく、甘く、そして確かに濡れた夜。

ことねは、画面の奥に囁かれるたびに──もう、戻れなくなっていった。

1. 白鳥の停車場

わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。

カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。

ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子

またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。

にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。

3. ぬれたようにぼんやり白く

ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。

それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。

4. 高い高い崖の上

僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。