第3話 秘密のライブチャット| 「誰にも見えない指先の導き」

今夜も、ひかりは配信の前に鏡を覗き込んでいた。

「……こんな顔、してたっけ……」

どこか、艶めいた瞳。 マイクに触れる唇は、無意識に艶を宿している。

今夜も──彼は、来るだろう。

チャットを開くと、まず最初に見えたのはたける。

【たける】:こんばんは、今日もお会いできて嬉しいです。

「こんばんは、こちらこそ……ありがとうございます」

すぐに、もうひとつの通知が現れる。

──よこっち が参加しました。

【よこっち*秘密メッセージ*】:その胸のボタン、開いてるじゃん。狙ってる? それとも、俺だけに見せてくれてるのか……その谷間、まるで俺のためにあるみたいだな。

(そんなわけ、ないのに……)

でも、言われてみれば、ボタンはひとつ多く外れていた。 わざとじゃない、けれど──無意識のなかに、どこか期待していた自分がいたのかもしれない。

【よこっち*秘密メッセージ*】:その手、動かして。自分で……胸、撫でてみて? 俺が、じっと見ててやるからさ……その柔らかさ、指の腹でじっくり確かめるように。

「……っ……」

思わず指が、膝の上で震えた。

【たける】:大丈夫ですか? 声、少し震えてますよ。

「あっ、はい……ちょっと、緊張してて……」

震えるのは、よこっちのせい。 でも、それを隠しながら話すスリルが、彼女の胸の奥をじんじんとくすぐっていた。

そっと、胸元に触れる。 薄い生地越しに伝わる自分の体温。

そこに重ねられるように──

【よこっち*秘密メッセージ*】:そう、もっとゆっくり。指先、滑らせて……ほら、乳首の輪郭、ちゃんと浮かんできてる。俺の目、誤魔化せないよ?

(なんで……わかって……)

ぞわぞわと、背筋に波が走る。 理性と感覚の境界が、じわじわと溶けていく。

配信中なのに。 見られているのに。 けれどそれが、こんなにも……熱いなんて──

【たける】:ひかりさん、今日の服、似合ってますね。

「え……ほんとに、ありがとうございます……」

顔が、熱くなる。 たけるの言葉が嬉しい──でも、胸元に触れていた手の名残が、その熱を別の意味に変えていた。

【よこっち*秘密メッセージ*】:その指、もう少し下に行ってみない? 下腹部、じわじわしてきてるんじゃないの?

(やめて、やめたい……のに……)

椅子に座る足元が、ひそかに開いていく。 指先が、少しずつ、ルームウェアの裾をつかみ──

【たける】:声に、少し甘さが出ましたね。今日は、少し疲れてますか?

「はい……ちょっと……」

ごまかすように、微笑む。 でも、その笑みの裏では、まったく別の熱が滴っていた。

【よこっち*秘密メッセージ*】:そのまま……見せてよ。太ももの内側、さっきからうずいてるんだろ? 画面越しでも、ねっとりと舐めてやれるほど感じてるんじゃない?

視線が怖い。 でも──見られることで、自分の中に生まれる何かに気づいてしまった。

(私……誰かに……)

見られて、命じられて、恥ずかしい自分に……

──濡れている。

ゆっくりと指が、自分の太ももに触れた。 それだけで、熱が跳ね上がる。

【よこっち*秘密メッセージ*】:いいよ、ひかり。今日の君、最高にエロい。俺の視線が這うだけで、こんなに感じてるんだもんな。

ひかりは、その言葉に……ほんの少しだけ、唇を噛んで、笑った。

1. 白鳥の停車場

わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。

カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。

ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子

またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。

にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。

3. ぬれたようにぼんやり白く

ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。

それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。

4. 高い高い崖の上

僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。