第6話 覗かれる快感|「私を、見てください──」
──最終夜。ことねは、自ら“見せる”決断をする。
第一章 カメラの角度を変えるとき
ことねはゆっくりと、ノートパソコンの画面に映る自分を見つめた。
ほんのりと灯った間接照明に照らされたスーツの襟元。薄く汗ばむ鎖骨、わずかに緩めたブラウスのボタンの隙間。
(……最後の夜にするって、決めたんだ)
スカートの奥は、下着もつけていない。
吸引器はもう、机の横にそっと置かれていた。
代わりに、今夜は──“すべて見せる”ための覚悟を、指先に込めていた。
ピロン。
『はやとさんが入室しました』
『こんばんは、ことねさん。今夜は……なんだか、雰囲気が違いますね』
ことねはマイク越しに微笑む。
「今日は、ちゃんと……“私”でいたくて……」
はやとのコメントが一瞬止まり、すぐに返ってくる。
『ことねさんがそう思ってくれるなら、どんな姿でも嬉しいです』
──チリン。
『よこっち(のぞきモード)降臨☆ ……って、えっ? ことねちゃん、今日ガチで脱いでる?それとも……これ、見せてくれるやつ?』
第二章 はじまりは、見られることで
ことねはそっと、カメラのアングルを数センチだけ下げた。
映るのは、太ももの中腹。スカートがわずかにずり落ち、ふとももの柔らかい内側が、かすかに映り込む。
「……見えてますか……?」
《よこっち》『は?え?マジで?ことねちゃん、今日はどうしちゃったの? エロすぎなんだけど』
『ことねさん、カメラが少し……あ、失礼。今夜は、本当に、綺麗です』
(違う、気づいてない。はやとさんはまだ……この先に、気づいてない)
けれど、そのまなざしがあまりにも優しくて。
ことねは決意した。
そっと、スカートを太ももまでまくり上げる。
そして、両膝を少しだけ、カメラの範囲内で……開く。
カメラには、濡れた秘部は見えない。
けれど、想像させるには充分すぎる隙間と、色香が、そこにはあった。
《よこっち》『やば……抜いた。マジ抜いた。えっちすぎて死にそう。指、入れて、ねぇ、ことねちゃん、見せて?』
ことねは、小さく震えながら、ゆっくりと指を濡れた奥へと沈めていく。
「……っ、ん……はぁ……」
下腹部から引き上げた指が、カメラの前で濡れて光る。
(見せてる……私、いま……見せてる)
羞恥と快感、そして高揚感。
『ことねさん……今日は、特別に綺麗です。言葉にならないほど』
(気づいてないのに……そんなふうに言われると……もっと、全部、見せたくなる)
「はやとさん……わたし、いま……すごく……恥ずかしいです」
『恥ずかしいことなんて、何ひとつありませんよ。あなたは、素直でとても綺麗です』
(言って、ほしい……もっと、知って……)
ことねは、指を二本にして、ずぶりと奥へ差し込む。
画面の中の自分が、よこっちに見られている。はやとには気づかれていない。
けれど、そこがたまらなかった。
「見てて……よこっちさんも……はやとさんも……」
「……私、もっと……ぐちゃぐちゃにされたいの……」
《よこっち》『ことねちゃん……最高。ほんとに……見せてくれて、ありがとう』
ことねは絶頂寸前で、画面の前でゆっくりと脚を閉じる。
わずかな湿った音とともに、ぴた、と指が抜けた。
『ことねさん……?いま、すごく素敵な表情をしていました……』
ことねは、乱れた吐息のまま、髪をかきあげる。
「……私……はやとさんに……ずっと、見てほしかったんです」
優しさと、焦らしと、そして“見せる”ことへの快感。
この夜、ことねはすべてを受け入れた。
──そして、新しい自分に、ログインした。
1. 白鳥の停車場
わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。
カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。
ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子
またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。
にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。
3. ぬれたようにぼんやり白く
ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。
それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。
4. 高い高い崖の上
僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。


