第2話 覗きチャット|覗きチャットの夜
ライブチャットの画面が開かれると、そこにはやさしい表情のメインさんがいた。
「こんばんは。今日も、会えてうれしいよ」
柔らかなその声に、わたしの緊張はすっとほぐれていく。 一日の終わり、ほっとするような穏やかなやり取り。そんな時間を過ごしたくて、今夜もこの部屋に来た――はずだった。
でも、その直後。
「……メインさんとの会話、楽しそうだね」
画面の隅に、新しい通知がひっそりと浮かび上がった。 のぞきさん――あの人だ。 前回のライブチャットで、わたしの感覚を完全に狂わせた、あの低い声。
『今日の服、前よりも薄めだね。胸、触れられてたの……思い出した?』
鼓動が跳ねる。メインさんのやさしい笑顔を前にしているのに、画面の隅では、のぞきさんが言葉でわたしの“過去”を呼び起こしてくる。
『電車の中で、制服の上から、乳首の輪郭なぞられた感覚……ちゃんと残ってるでしょ?』
やめて……。 声に出せない懇願を飲み込んで、わたしは画面のメインさんに笑顔を返す。
「……今日、ちょっと疲れてるかも。朝の電車がすごく混んでて」
『……混んでたね。きっと、あのときみたいに』
のぞきさんの文字が、画面の右下でまた震える。
『ねぇ……ストッキングを破かれて、指が入り込んできた感覚、覚えてる?』
わたしは言葉を失いそうになる。 メインさんは変わらず、穏やかな話題を続けてくれていた。
「でも、会社近くのカフェで朝食とれたから、ちょっと回復したよ」
『朝食より、もっと“とろけてた”よね。脚を閉じたの、何回だった?』
脚がぴくりと震える。 画面越しの会話では笑顔を浮かべながら、わたしの下半身は熱くなっていた。
『メインさんとしゃべってるその間に……ボタンの下から、手を滑り込ませたくてたまらないんだけど、いい?』
文字だけのはずなのに、感覚が生々しい。 制服の下、ブラの上から円を描くように……まるで、乳首を避けながら、焦らしてくる指先のように感じる。
「明日は雨らしいよ。通勤、気をつけてね」
「うん、ありがとう」
メインさんとのやり取りに心を向けようとするのに、のぞきさんの文字が容赦なく追いかけてくる。
『ブラの中、汗で濡れてるんじゃない? じゃあ……その濡れ、指で確認させて?』
思わず腕を組む。 でもそれも、まるで“胸を押し上げるように”に見えるだろう。 羞恥と快感が交錯し、身体の奥がじわじわと疼いていく。
『スカートの奥……ヒップの下のあたり、汗ばんでるよね。今、想像してる。 スカートをめくって、ショーツの中に指をすべり込ませて……ゆっくり、なぞってる』
椅子に座る身体が、かすかに震える。 ふとももの内側、さっきからじっとりと湿っていたのは、汗だけじゃない。
「それでさ、今度、おすすめの小説があるんだ。 読んだら、感想聞かせてくれる?」
メインさんのその言葉すら、いやらしく響いてくる。
『感想なんて聞かなくても、君の“反応”は全部わかるよ。指、入れたら……キュって、締めるよね?』
画面の隅で、のぞきさんがにじり寄ってくる。 メインさんの目の前で、わたしはすでに、内側をくすぐられていた。
「……またね。今日は、ゆっくり休んで」
メインさんがログアウトして、画面が暗転する。 残ったのは、のぞきさんのチャットだけ。
『メインさん、気づいてなかったね。 でも、君の乳首が立ってたこと、下がぐっしょりになってたこと……ぼくには、全部わかってた』
静寂の中に落ちたわたしの耳に、その言葉だけが残る。
『じゃあ、続きをしようか。……今なら、全部ぼくのものだよね?』
身体の芯が、かすかに震える。 そしてまた、彼の指先――いや、言葉という名の指が、わたしの中へと忍び込んでいく。
背徳の快感は、まだ終わらない。

