第6話 覗きチャット|焦らしの覇権争いのなかで

ライブチャットの画面にログインしたとき、すでに覗きさんたちは待っていた。 今日も、誰にも気づかれないように、私の“身体”にいたずらを仕掛けてくる。

でも、今夜は――何かが違う。

ふたりの覗きさんが、まるで“焦らし”の腕を競い合うように、代わる代わる痴漢まがいのメッセージを送ってくる。

メインさんとの再会――穏やかなやりとりのはずが

「こんばんは。今日も一日、おつかれさま」

画面にメインさんが現れる。 その声は、やさしく包み込むようで、心がほどけるような安心感をくれる。

「……あれ? 今日の服装、なんだかちょっと、いつもと違うね」

「え、そう……ですか?」

胸元がほんのり開いたブラウス。 そして、わざと短めに仕立てられたスカート。 それは、覗きさんの指示で選ばされたコーディネートだった。

「うん、なんか……可愛いよ」

その言葉に、頬がほんのり熱くなる。 でも、安心してはいけなかった。

覗きさん1からの“ゆっくり吸い上げる”指令

〈今、吸ってみるね。弱めで、じんわりと。スカートの奥、もう濡れてるの知ってるよ〉

突如、リモートおもちゃが振動を始める。 それはまるで、内側から舌で吸い上げられるような、やさしいけれど確実な快感。

(だめ……今、話してる最中なのに……)

「ねえ、今日、ちょっと相談したいことがあって……」

メインさんの声が、私を現実に引き戻す。 必死に笑顔を作りながら、頷く。

「はい、なんでも聞きます」

もう一人の覗きが、より激しく、より巧妙に

〈そんな甘さじゃ足りないでしょ? こっちは、指先でパンティの上からなぞるよ。じわじわと、割れ目の縁を擦って〉

ぞわっ……と、腰の奥から電流が走る。

膝が少し震えるのをごまかすように、姿勢を正した。

「……なんか、声が震えてる?」

「だ、大丈夫です……ちょっと、エアコンが強いのかも」

それは完全な嘘。 身体はすでに熱を持ち、中心がじっとりと滲み始めていた。

メインさんのやさしさと、裏側で交差する痴漢の刺激

「最近、仕事つらくない? ちょっと、疲れてるように見えたから」

(こんなときに、そんなやさしいこと言わないで……)

私の心は、ふたりの覗きの手に引き裂かれていく。

片方は、吸引の強弱で乳首を責めてくる。 もう片方は、太ももの奥をくすぐるように撫でながら、じっくりと中心に迫ってくる。

(どっちがどっち……もう、わからない……)

「何かあったら、ちゃんと言ってね。俺、ずっとここにいるから」

その声すら、身体に浸透してきて、わけがわからなくなる。

囁き、振動、そして痴漢の記憶をなぞる指先

〈満員電車、覚えてる? あのときの痴漢の指。あれを、もう一度、再現してあげるね〉

画面の端で表示されるメッセージ。 こっそり開いた別ウィンドウ。 そこに覗きさんの“再現”が、タイピングでねっとりと流れてくる。

〈まずはスカートの上から、ぐっと撫でる。 下着の縁を探って、指を滑らせる。 そのまま、布越しにクリトリスを何度も……吸うように振動して……〉

ぞくぞくと背筋が痺れる。 喉が詰まり、自然に太ももが閉じてしまう。

「……あれ、大丈夫? 本当に、無理しないでね」

「はい……ごめんなさい、ちょっと眠気が……」

それも、嘘。 でも、言えない。 彼が見ている前で、私は今、ふたりの“覗き”から同時に快感を与えられているなんて。

“見えない争い”が激化する――どちらが私を先に壊すか

〈次、強にするね。吸って、離して、また吸う。吸いながら撫でて〉

〈おい、譲る気はないよ? こっちは裏側から、じんわり押し上げて、ほら……〉

リズムの違う責めが交差する。 ふたりの覗きが、まるで私の身体を“舞台”にしたかのように、タイミングと刺激で勝負を挑み合う。

「……なにか、言いかけてたよね? 続けて?」

「……えっと、なんだっけ……」

もう、頭が働かない。 腰がじっとりと熱く、乳首もパンティの奥も、全部が限界に近づいていた。

覗きさんたちは、それを見越したかのように――

〈じゃあ、せーので……一緒に“イカせる”よ?〉

吸引が一段と強くなり、同時に、太もも裏からの刺激がクライマックスに達する。

「……っっあ、う……!」

震える身体。 その瞬間、チャットの接続が一瞬だけ乱れた。

「……ん? 音、ちょっと変だった?」

「た、たぶん回線が……大丈夫です……!」

震える手で、マウスを握りしめる。 汗ばんだ太もも。 びしょ濡れになったショーツ。

私はまた、ふたりの“焦らし合い”の勝者のように――壊されていった。

1. 白鳥の停車場

わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。

カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。

ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子

またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。

にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。

3. ぬれたようにぼんやり白く

ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。

それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。

4. 高い高い崖の上

僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。