第4話 美羽と覗きの秘密|触れられていないのに、おかしくなる身体

第4話:触れられていないのに、おかしくなる身体

■ふたりきりのやさしい夜

画面に映る悠人くんの顔は、やっぱりどこか安心できる。

少し癖のある前髪の先から覗く真面目そうな瞳。
大学のレポートが大変だったことや、今度の就職活動の話。
何気ない雑談を重ねるたび、私の心はふわふわとほどけていった。

「美羽ちゃん、今日も……なんていうか、柔らかい雰囲気でいいね」

「えっ……そんな……」

照れながら、私は画面の下で膝をくっつけて俯く。
この何気ないやり取りが、どこかとても嬉しくて――でも、今夜はまた、別の“視線”も入ってきているのを知っている。

八田さん。
あの覗き部屋の、変わったユーザー。

静かに、気配だけを残して入室し、美羽専用の秘密のメッセージ欄にだけ、じわじわといやらしい言葉を送り続けてくる人。

今夜も、彼の存在に気づいた瞬間、背筋がざわついた。

■じわりと届く、“下”からの刺激

――【こんばんは、美羽ちゃん。今日はブラの色、何色かな?】

(な、なんでいきなり……そんな……)

私は頬を染め、メイン画面の悠人くんから目を逸らさないように気をつけながら、内ももをギュッと閉じた。

(悠人くんに見えないように……普通にしてれば、気づかれない)

――【そのまま、スカートの上から、指を添えて。そっと……触れるだけでいいから】

思わず息を止めた。
なにげなく姿勢を直すふりをして、スカートの布越しに自分の下腹部をなぞる。

そこは、着替えたばかりの柔らかいショーツの上からでも、自分でも分かるくらいに敏感になっていた。

「……あれ、美羽ちゃん、今ちょっと動いた?」

「う、ううんっ。ごめんなさい、椅子が……ちょっとだけ、滑っちゃって」

あぶない。
今の私の反応に気づかれたら、きっと悠人くんは困るに違いない。

■優しさと、焦らしの狭間で

「今日、ちょっと疲れてる?」

悠人くんのその一言に、私は一瞬、胸がギュッとなった。

「……そうかも。最近、授業もバタバタしてて……」

「無理しないでね。チャットが負担になってたら、休んでもいいんだから」

その言葉が、本当に優しくて。
でも、それと同時に――

――【じゃあ、美羽ちゃん。ブラの上から、指先でゆっくり円を描いて】

(だ、だめ……上まで……)

私の胸は、パジャマの上からでも分かるほど薄手のブラに包まれていて、ちょっと指を乗せるだけでも、自分の硬さが伝わってしまいそうだった。

だけど。

八田さんの言葉に従って、人差し指でそっと撫でてしまう。
柔らかく、くすぐるように。
円を描くたびに、乳首が自分でもわかるほどツンと尖っていく。

(悠人くんの顔を見ながら……なんでこんなこと、してるの……)

でも、してしまっている自分がいた。

■わからない。どうして反応しちゃうの?

――【ねぇ、美羽ちゃん。もしかして、今……感じてる?】

その一文を見た瞬間、びくっと肩が震えた。

感じてる。
確かに、まだ何も直接触られていないのに、身体の中がじんわりと熱を持ってきていて。

「美羽ちゃん、なんだか顔が赤いよ?」

「え、えっと……なんか、急に暑くなっちゃって」

「そっか……無理しないでね?」

その優しさが苦しくて、うれしくて、でも、もっと恥ずかしくて。

八田さんは、まるでタイミングを見計らったかのように、さらに次の“命令”を送ってくる。

――【じゃあ次は……脚をちょっとだけ開いて。誰にも見られないように、そーっとね】

私は画面の前で笑顔を保ちつつ、スカートの裾をわずかに引き上げ、ひざを数センチだけ開いた。

その隙間から、ほんのりと肌が覗いているのが分かる。

――【そのまま、そこに息を吹きかけるようなイメージで。指先で……軽く、なぞってみて】

触れないで。
そんなこと、しちゃいけない。
でも、指が言うことを聞いてくれない。

指先が布越しにそこを撫でた瞬間、ショーツが湿っているのが分かって、ゾクリと震えた。

(いや……やだ、私、ほんとに……)

■音のない絶頂に近づいて

「ねぇ、美羽ちゃん。来週も、また話せたら嬉しいな。今度は、もう少しお互いのこと……いろいろ話してみない?」

悠人くんの言葉に、私は頷きながら、涙が出そうだった。

優しい人。
ちゃんと私を見てくれる人。

でもその優しさの裏で――
八田さんの視線が、じっと私のすべてを覗いてくる。

命令に従って、呼吸が浅くなるたびに、下腹部の熱が上がっていく。

(あっ、ん……なんか、また……)

そのとき、画面の端に浮かぶ“覗きルーム”から、別のユーザーがログインする表示が出た。

(え……? 誰か、入ってきた……?)

混乱の中、会話を終えた悠人くんがログアウトしていく。

■チャットの終わりに――

悠人くんが消えた直後、八田さんから最後のメッセージが届いた。

――【今日はここまで。すごく、がんばったね。次は、もう少し……深く触れてあげるよ】

(もう、ダメ……こんな……)

快感とも羞恥とも言えない混乱の中で、私の身体は、誰にも触られていないのに熱を持っていた。

そして――
画面には、また新たな“のぞき部屋”の参加者の影。

次回、美羽の知らない誰かが、その秘密の部屋に入ってくる――。

1. 白鳥の停車場

わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。

カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。

ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子

またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。

にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。

3. ぬれたようにぼんやり白く

ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。

それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。

4. 高い高い崖の上

僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。