第6話 美羽と覗きの秘密|誰にも言えない身体

■触れていないのに、疼いてしまう

「こんばんは、美羽ちゃん。今日も来てくれて嬉しい」

悠人くんの優しい声が、スピーカー越しにじんわりと胸に染みる。

「うん……こちらこそ、会えるの楽しみにしてた」

今日の美羽は、これまでの中でいちばんナチュラルな笑顔を浮かべていた。けれど――その裏では、すでに彼女のライブチャットには“ふたりの覗きさん”が潜んでいた。

「こんばんは、美羽ちゃん。今日の肌、いつもより艶っぽいね」
「準備してない割には……下、もう濡れてるんじゃない?」

(……ッ! やめて……)

キーボードに指を置いたまま、美羽の太ももがピクリと震える。

昨日あたりから、八田さんと高森さんは明らかに共謀していた。
メッセージのタイミングも、語尾の焦らし方も、ねっとりと交互に。

「このままじゃ、声出ちゃうんじゃない?」

(……そんなこと……ない……もん)

でも、画面の下で、リクルートスーツのスカートの中は――すでに熱を帯び始めていた。


■真剣な言葉と、卑猥な言葉が交錯する夜

「そういえば、美羽ちゃん。来月、面接とか控えてるんだっけ?」

悠人くんの問いかけに、美羽は頷く。

「うん、緊張してて……ちゃんと答えられるか不安で」

「大丈夫。美羽ちゃんは、人の気持ちをちゃんと考えられるから。面接官にも、絶対伝わると思う」

その一言が、胸に染みて――

(やさしい……悠人くんだけは、やっぱり――)

けれどその瞬間、チャット欄に同時に届いた“ふたつの悪意”。

「そのブラウス、今すぐめくりたいなぁ。乳首、また尖ってきてるんじゃない?」
「脚をもっと広げてごらん? ほら、そこ……下着、もう濡れて透けてるよ?」

(あ……ッ)

息が止まりそうになった。
彼らは“触れていない”のに、的確に美羽の変化を言い当ててくる。

その恥ずかしさが、なぜか興奮に変わってしまって――

(こんな、準備してないのに……どうして……身体が勝手に……)


■自覚してしまった、“変わってしまった自分”

「美羽ちゃん……今日、いつもよりちょっとドキドキしてる?」

悠人くんの言葉に、ビクリと肩が跳ねた。

「え……そ、そんなこと……ない、よ……?」

(バレてない……よね?)

焦りが、羞恥をさらに煽る。

その間も、八田さんからの秘密メッセージ。

「そろそろ、自分の手を太ももに這わせてみて」
「そのまま、じっと悠人くんを見ながら、自分の“感じてる顔”を見せて」

(……だめ、そんなの……できるはずない)

でも――指先は、膝の上で小刻みに震えていた。


■そして、美羽は“堕ちていく”

配信終了後。

部屋の明かりを落とし、ひとりベッドに腰を下ろした美羽は、しばらくじっとしていた。

胸元には、自分でもわかるほどの熱。
スカートの奥は、ショーツごとじっとりと濡れている。

(私……おかしくなってる)

(悠人くんと話すたび、心が落ち着くのに……)

(八田さんと高森さんからの、あの焦らしが……頭から離れない)

気づかないうちに、彼女は――
もう、「見られながら、焦らされて、濡れてしまう」身体に開発されていた。


■エピローグ:美羽の秘密

スマホを手に取り、そっとチャットアプリを開く。

《美羽ちゃん、今日も最高だったよ。》

《次は、白いパンストとかどう? リクルートの下に忍ばせてさ》

《また、君の“濡れる瞬間”を見せてね》

美羽は、深くため息をつき、
そのあと――ゆっくりと、画面を閉じた。

(……見られるのは、恥ずかしい)

(でも……やめられない)

あのふたりの“覗きさん”たちは、
きっとまた、美羽の中に新しい快感を植えつけていくのだろう。

けれど。

(わたしが好きなのは……悠人くんだけ、だから)

その思いだけが、美羽をピュアなままにとどめていた。

だが――
身体は、もう誰よりも淫らに、反応するようになってしまっていた。

【完】

1. 白鳥の停車場

わたしはずうっとぐあいがいいよジョバンニは言いました。するとそれは、チョコレートででもこさえたようなすすきの穂がゆれたのです。いま誰もいたようではありませんからな。もうじき白鳥の停車場だよカムパネルラはこおどりしました。この男は、どこかで待っていようかと言いますと、いままでばけもののように、ほんとうにいいことをしたカムパネルラのお父さんも来た。

カムパネルラがきのどくそうにしましたが、あなたはジョバンニさんでしたね。そしてたくさんのシグナルや電燈の灯のなかを汽車はだんだんしずかになってうなずきました。

ジョバンニはなぜかさあっと胸が冷たくなったように思われませんでした。あたしきっとあの森の中から立ってかがやき、その上に一人の寛い服を着て、星めぐりの口笛を吹きました。

2. 三番目の高い卓子

またすぐ眼の下のとこをこすりながら、ジョバンニやカムパネルラのようすを見ているときなどは思わず叫びました。草の中につかれているのを見ましたけれども、こんな雁が飛んでいるもんか。ジョバンニはすぐ入口から三番目の高い卓子にすわったばかりの青年に言いました。

にわかにくっきり白いその羽根は前の方へ行っておじぎをしました。

ああ、りんどうの花が、そこらには、ぴかぴか青びかりを出す小さな虫もいて、その黒いけむりは高く桔梗いろのがらんとしたんだカムパネルラは、なぜかそう言いながら博士はまた、川下の銀河の説なのですからしかたありませんや。ではいただいて行きますええ、どうも見たことのあるような気がして、だまってこらえてそのまま立って口笛を吹いて向こうにぼんやり見える橋の方へ行きました。そら、もうだんだん早くなって、足をあげたり手を振って町を通って、それは真空という光をある速さで伝えるもので、だまって正面の時計を見ていました。

3. ぬれたようにぼんやり白く

ぼくたちここで天上よりももっとすきとおっていた席に、ぬれたようにぼんやり白く見えるだけでした。きっとほんとうの幸福をさがすぞジョバンニは唇を噛んで、その顔いろも少し青ざめて見えました。またそのうしろには三本の脚のついた岩が、まるで運動場のようにゆっくり走っていました。そしてこれからなんでもいつでも私のとこへ持って来た鷺を、きちんとそろえて、少し伸びあがるようにしているのでした。僕はほんとうにカムパネルラといつまでもいっしょにうたいだしたのです。

それはひる学校で見たように席にもたれて睡っていたのです。ぼくはそのひとによってちがった、わずかのいいかおりになってはねあげられたねえ。私は大学へはいっていました。見えない天の川の水のなかから四方を見ると、車室の天井を、あちこち見ていました。

4. 高い高い崖の上

僕はほんとうに高い高い崖の上を通るようになりながら腰掛にしっかりしがみついていました。いや、商売ものをもらっちゃすみませんなその人はもう行ってしまいました。すると耳に手を入れてみましたら、鳥捕りは、何かまっくらなものが鳴りました。この傾斜があるもんですからなんでもかまわない、やっちまえと思ってまたよく気をつけて見ると、そのとき出ているよ。